これまで数回、カンナビジオール(CBD)のてんかんへの効果について記事を書いています。
ですが、お伝えしたいのは Epidiolexという市販薬と、日本国内で生産されているCBD製品が本当に同じ効果があるか不明だという点。
大麻草全草から作られた Epidiolexと、産業用ヘンプの茎から作られた国内流通の CBD製品では、CBD以外の微量成分がかなり違い、微量でもきわめて重要な効果を果たしていると思われるからです。(アントラージュ効果)
日本で買えるCBDオイルは、本当にてんかんに対して効果があるのか?
この疑問に答えてくれる論文を見つけましたので、そちらもご紹介します。
今回、有力な 2017年3月にメキシコのモンテレイ工科大学から報告された論文です。
「メキシコの難治性小児てんかん患者におけるCBD使用に関する調査報告」
まずは社会的背景を少し・・・・・・
メキシコはアメリカ合衆国と長い国境を接しており、アメリカ国内で消費される違法薬物の密輸窓口です。
そのため特にアメリカ—メキシコ国境地域では、薬物利権を巡るカルテル同士の抗争や戦闘により、おびただしい数の犠牲者を出し続けています。これが俗に言う「麻薬戦争」ですね。
そのため、最近までメキシコ人の大麻草に対する印象は非常に悪いものでした。大麻もまた、コカインやヘロインと並んで、利権を巡った争いの種だったからです。
実際に2008年の世論調査では、大麻の合法化に賛成するのは市民のうちわずか8%に留まりました。
それにもかかわらず、2009年にメキシコ政府は大麻を”非犯罪化”。
これは、違法薬物を徹底的に弾圧してもダメだということになり、ならば薬物使用者を犯罪者として逮捕するのはやめて、依存症患者として、治療を提供しようという発想の転換が、欧米社会全体で起きたのです。
(注:非犯罪化と合法化とは厳密には異なります。非犯罪化とは、違法だけれど逮捕はされないという状態であり、たとえば日本における歩行者の信号無視、もしくは、総理の友人による諸犯罪のような扱いです。)
続いて、2015年にはレノックスガストー症候群の8歳の女の子のケースをきっかけに、CBD製品の流通と使用が合法化されました。
また同年、メキシコ最高裁判所は4名の患者の医療目的の大麻栽培を合法と改定。
医療大麻合法化の法案が2016年12月に上院を、2017年4月には下院を圧倒的賛成多数で通過し、2017年6月にメキシコで医療大麻が合法化されました。
メキシコにはおよそ150万人のてんかん患者がおり、その3割が難治性てんかんとされています。アメリカとの文化的なつながりが強いため、この国でもCNNの『Weed』というドキュメンタリー番組の反響は大きく、難治性てんかん患者をもつ家族はCBD製剤に期待しました。
メキシコ国内ではCBD製剤は製造されていないため、アメリカから輸入しています。
購買者の、43名のてんかん患者のネットアンケートをまとめたものが、以下になります。
・CBDを購入、内服していた子の平均年齢は7.6歳で、診断名は、レノックス・ガストー症候群が20人、ウエスト症候群が8人、ドゥーゼ症候群と大田原症候群がそれぞれ1人ずつで、その他の患者は特定の病名はついていませんでした。
・CBDを開始する前に、3〜4種類の抗てんかん薬を内服していた子が25人、5〜6種類の子は11人いました。
・CBDの摂取量としては、1〜4 mg/kg/day 程度の少量。
Epidiolexの臨床試験の際のような高用量(10 or 20 mg/kg/day)の服用していた子は0人。
・内服していた製剤で最も多かったのは、HempMeds 社の RHSO-X 5000mg で、31人が使用。これはこの時期、メキシコ政府が同製剤の輸入のみを許可していたことが関係しています。
結果は、81%の患者さんでけいれん発作の減少を確認。特に7人(16%)の患者さんでは、発作が完全に消失。
また減少したのは発作の頻度だけではなく、一回の発作の持続時間と重度も改善したと8割以上の家族が実感していました。
生活の質に関しても、多くの家族が機嫌のよさ、注意力の改善、意思疎通、睡眠リズムや食欲に関して、CBDの服薬開始後の方が改善していると感じていました。
副作用に関しては、4割の患者さんで図のような軽度の有害事象が認められましたが、6割の患者さんには明らかなものはありませんでした。
この報告で使用されている製剤(Hemp Meds 社の RSHO-X 5000)は、日本でもインターネット上で購入することができますが個人で輸入する際は、成分表などが必要なケースも。
日本で流通している CBDオイルでも、てんかんへの有効性が期待出来る可能性をはあります。
原料となる大麻の原産国や加工国を把握することが、効果ある製品にたどり着く手がかりです。
大麻由来の製剤の有用性は科学的に確立されつつあり、ついに日本と同じく厳格な規制を強いていた韓国でも、医療大麻製剤解禁の動きが出てきました。
日本でも、科学に基づいた医療大麻の議論が広まることを、願います。
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